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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

馬の尻穴〈中津川市加子母〉

 昔、あるところに、ちょっと頭の悪い息子がありました。
 親は、少しでも利巧に見せたいと思っておりました。
 隣村の親類に普請がありました。
 お父さんは、みやげを作って、息子をお祝いの使いにやることにしました。そして色々と教えました。
 「あちらへ着いたら、『今日はお父さんの代わりに、ご普請のお祝いに参りました。大変立派なお家ができて、おめでとうございます。これはお祝いのしるしでございます』と言って、みやげを向うへ差し出すんじゃ」と教えました。
 「お前が行けば、きっと方々を見せてくださるから、『良い普請じゃ』と褒めることじゃ。もしも、どこかに穴があったら、『良い普請じゃが、この穴だけが残念じゃ。ここに火の用心の札でも張るとよい』と言え。そうすると、おじさんはお前のことを、大変利巧になったと思われる」と、教えてやりました。
 先方へ着いて、息子は習ったとおりに言って、みやげを差し出しました。
 おじさんは、方々案内してくれて、それから「ついでに馬を見てくりゃれ。大変立派な馬が手に入ってな」と、厩へ案内してくれました。息子は、馬のまわりをよく見てまわり、「まことに良い馬じゃが、あそこに穴があるのが残念じゃ。あそこに火の用心の札でも張ったらどうですか」と、馬の尻の穴を指さして、おじさんをがっかりさせました。


耕作・運搬・乗用に馬や牛がどの家にもいた
【解説】
 狂言に「萩大名」というのがある。和歌好きの亭主の茶屋へ萩見物に行く大名が、太郎冠者に一首の和歌を教えられるが、いざとなると、まるっきり忘れてしまう。どんなことでもそうだが、教えられたことが身についてしまうまで使ってはならない。