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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

猟の名人〈中津川市蛭川〉

 奈良井に数右衛門という猟の名人がいました。昔の銃弾は鉛の弾でした。五発六発と続けて同じ的を撃つと弾が重なり合って鉛の棒のようになっていたそうで、名人数右衛門のことは苗木藩にも知られておりました。
 ある年飛騨で開かれる競猟会に藩の代表として派遣されました。飛騨の猟師たちは、美濃者の手柄にさせまいと、よい待場を与えてくれません。
 三日目の晩、夕食を食べながら数右衛門は「今まで俺の待場へは、一頭の鹿も姿を見せん。出てくれさえすりゃ、一頭出りゃ一頭、三頭出りゃ三頭、必ず仕留めて見せるぞ」と言いました。飛騨の猟師たちは、顔を見合わせ、次の日は一番鹿のよく出る待場を与えました。「もし仕損じたら、みんなで笑ってやろう」という腹でした。
 数右衛門は、今日こそはという意気込みで待場に立ちました。約束したかのように飛び出して来た鹿を一頭、二頭、三頭。三発の銃声は続けざまに山にこだまし、見事三頭の鹿を仕留めていました。
 このことがあってから、今まで冷たかった飛騨の猟師たちの態度がかわりました。 競猟会は七日間ですが、残りの三日間、よい待場を与えられ、計一七頭を射止めるという快挙を果たしました。
 矢割りといって、猟師仲間では、獲物の数によって手当てが払われます。一七頭の矢割りは一等賞です。
 苗木藩の選手として面目をほどこし、ご褒美をいただいたのでした。


キジ(オス)
【解説】
 キジを撃つにはその頭をねらう。キジの目は赤いふちどりがあって、この眼を射通すと一発で仕留めることができる。
 その練習をするために数右衛門は一〇間(一八メートル)以上はなれたところに、南天の実をおき、それをねらって必ず命中させるという腕前をもっていた。