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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

娘に化けた狐〈中津川市蛭川〉

 一人の男が広い原っぱの一本道を、足ばやに歩いていると、突然先の方で、草むらから年老いた一匹の狐が飛び出しました。
 男は太い松の木の陰にかくれて狐の様子を見ていました。
 狐は木の枝を拾っては口で折り、それを自分の体に振りかけています。すると、なんと狐は若くて美しい娘に化けました。
 娘はうずくまって木の葉をかき集めています。それが少したつと、重箱を包んだ風呂敷包みに変わりました。娘は向こうへ歩いて行きます。男は娘の後ろから近づくと「どこへ行くのじゃ」と聞きました。娘は「おばさんの病気見舞に」と答えました。
 男は化け狐について行ってみようと思いました。色々と話しながら行くと、やがて、おばさんの家に着きました。見るとこの家は、男もよく知っている家です。男は娘と一緒に家の中へ入ると、娘が例の風呂敷包みを出そうとしています。「この娘は化け狐なんだ」と叫ぶと同時に、男は土間にあった棒をふり上げると、娘の肩へ力いっぱい打ちおろしました。「キャッ」と言って、娘は気絶しましたが、狐の姿に戻りません。医者を呼びに走るやら、近所の人達がよって来るやら、大変な騒ぎになりました。娘は気絶したまま死んでしまい、家の人達は娘にとりすがって泣きました。男は正座して合掌し「南無阿弥陀佛」と唱えました。
 暫くして男は、首筋に寒気を感じ、合掌しながら目をあけてあたりを見まわすと、急に様子が変わり、家も無く、大勢の人達の姿も消えて、男はただ一人、原っぱの中で合掌して座っていたのです。


中津川市蛭川
【解説】
 久しぶりに狐に化かされた話で、しかも全部が化かされたことだったわけ。
 おばさんの家まで歩いて行ったというのも、同じところをぐるぐる回っていただけのことだろう。私も祖父母から、狐や狸の化ける話を沢山聞いた。今では山を切り開いて宅地や道路になって、狐や狸が住みにくくなった。