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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

雨乞い岩〈中津川市坂下〉

 空梅雨で、もう何日も雨が降らず、百姓は田植えをしようにも水がなくて困りました。
 ついに飲み水さえも不自由になりました。
 そんなある日、身なりの悪い、ボロボロの衣をまとった旅の坊さんがやって来て、雨を降らせてやろうと言いました。
「あんな糞坊主に雨が降らせられるものか」
「ほんとうは飯をくらいに来たのやぞ」
口々にののしる百姓にかまわず、坊さんは鐘を鳴らし、お経を唱え始めました。その声はとても高く、美しかったので、百姓共もつい心が動かされ、一緒になってお経を唱え始めました。
 坊さんが一生懸命に鐘を叩いていたので、叩き棒が折れてしまいました。仕方なく小石を拾ってチンチンと鐘を叩いていると、今度は鐘が割れてしまいました。仕方がないのでそばにあった岩を小石で叩き始めると、百姓たちも小石で岩を叩き出して、日がくれてもまだ叩き続け、夜中になっても続けているうちに、東の空が朝焼けして真っ赤になり、ぽつんと黒雲が見えたかと思うと、それが空一杯に広がりました。
 ついにポツリポツリと雨が降り始め、しだいに激しく降ってきたので、百姓たちはおどりあがって喜び合いました。
 みんな大喜びしてふと気がつくと、坊さんの姿はどこにもありません。
 みんなはこりゃあ弘法様のご慈悲に違いないと言い合いました。
 それからというものは、みんなで叩いた岩のことを、雨乞い岩と呼ぶようになったと、伝えられています。


【解説】
 弘法大師、空海は全国を布教して歩き、橋を架けたり、灌漑用の池を掘ったりした。他の僧の行ったことも、弘法の行いにされてしまったり、超自然現象を行ったとされてしまう。老婆の一人住まいの所へ一宿を乞うと、老婆は米がないと言う。稲架に掛けてある米を取って来いと言う。その夜大雪が降って老婆の足跡を隠してしまった。跡隠しの伝説である。