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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

どんどの古狐〈中津川市加子母小和知〉

 昭和7、8年ごろの話です。ある日、魚政さんという元気のいい行商の魚屋さんが、小郷まで行商に行き、古山のどんどのあたりを自転車で来かかると、誰か呼び止める者があります。それは若い娘さんでした。
「今晩急にお客さんがあって、弘法町まで買い物に行くところやけど、魚の残りがあったら分けてもらえんやろか」
と、娘さんが言いました。魚政さんは自転車の荷台の包みを開いて
「残りの魚はこんだけあるが、全部買ってくれるんなら、8円40銭に負けとくがどうじゃえも」
 娘さんは5円札を2枚出しました。魚政さんは受け取って財布に仕舞い、お釣を1円60銭渡しました。
 魚政さんは久しぶりの大商に喜んで、家へ急いで帰って行きました。
 家へ帰って、精算をしようと思って財布を開けたところ、お金と思って受け取ってきたのは全部樫の葉っぱでした。
 翌朝、登校途中の小学生がどんどの付近の道端に、魚といっしょに小銭が散らばっているのを見つけ、みんなで拾い集めたら、全部で1円60銭もあったそうです。
魚政さんが若い娘に払ったつり銭とぴったり合っていました。
 魚政さんはどんどの古狐に化かされたのです。魚政さんの他にも随分と、化かされたり、いたずらをされたりした者も居ました。この古狐はいつの間にか姿を見なくなり、このごろ古山あたりで時々見かける狐は、とても化かせそうもない若い狐です。


【解説】
 小和知の恵那北高校のスクールバスの車庫のあった付近は、昔は「起」の前から永楽座の跡へかけて、うっそうとした木が生い繁り、その中をトンネルのように道路が通っていて、古山と呼ばれる昼でも暗いような淋しい所であった。古狐はもとは永楽座の床下に、住んでいたこともあるといわれる。