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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

河童の恩返し〈中津川市付知町大起〉

 庄屋様の下男が馬を引いて、山へ草刈りに行き、帰りに付知川のあしげ淵で馬を洗ってやって、さっぱりした馬を馬小屋へ入れようとすると、馬はなかなか入ろうとしません。
 それで、後ろへまわって尻を押そうとすると、妙なものがしっぽにくっついています。
 よく見ると河童がしっぽにしがみついてい離れません。馬が暴れ出すので、みんなが表へ出て見に来ました。
 下男は馬栓棒を振り上げて河童を叩こうとしました。
「これこれ、そんなむごいことするやない」と、庄屋様は下男を止め、河童に向かって「これからはこんないたずらはやめて、おとなしょうして川で遊べよ」と言って、河童をしっぽから離し、川へ帰してやりました。
 次の日から、妙な事がおきました。それは、お客様の数に合わせて、裏の物干し竿の鍵に掛けてある腰籠の中に、魚が入っているようになったのです。 お客様も魚料理がとてもうまいとほめてくれます。
 ところが、腰籠を吊ってある鍵がふるくなったので、下男が鹿の角に変えたら、もう魚は一匹も入れてなくなりました。 これは鹿の角を河童が嫌いだからでしょう。
 庄屋様は下男から話しを聞くと、下男を連れて、あしげ淵へ河童の大好きな胡瓜をたくさん持っていって、河岸に置いて帰ろうとすると、河童は少し頭を出して、何べんも、何べもおじぎをして見送っていたそうです。
 そのことがあってからは、付知川にも、人の前にも河童の姿はどこにも見かけないようになったといいます。


【解説】
 河童のことを原文では「かわらんべー」とルビがふってあります。あしげ淵には(大起)と註があります。馬栓棒は馬が小屋から出られないように横にさしておく棒のことです。腰籠は「ひご」と原文ではなっています。原文では地の文も方言で書かれていますが標準語になおしました。