HOME > ひがしみの昔話 >

ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

痣岩〈中津川市落合〉

 樹齢数百年を越える傘松の大木の下に、村人が痣岩とか、いぼ岩と呼ぶ大岩があります。
 話は今から八百年ほど前のこと、このあたりを鎌倉街道が通っていた頃、街道に面して一軒の茶屋がありました。そこに千代という娘が両親と一緒に住んでいました。千代には大好きな兄がいましたが、北九州の石積みに出たっきり、未だに生死がわからないままです。千代は顔に大きな痣があって、秋葉神社へ毎日おまいりしても、人の言う事は何でもやってみましたが、痣は取れませんでした。千代は痣を苦にして床についてしまいました。
 ある日、千代は大岩で兄と遊んだ夢を見ました。千代はこの夢を見てから大岩が好きになりました。そこへ行けば兄に会えるような気がします。
 朝から降っている雪は、夜になってもやみません。兄の呼ぶ声がその雪の中から聞こえて来ます。「千代、千代、早くおいで」「兄さん、千代をおいていかないでよー」
 千代は長い間寝ていて、足の自由がききません。全身の力で外へ出ると、小石の道や茨のやぶも夢中で這いました。
 「兄さん待ってて、千代は今、兄さんのところへ行くから」そして、やっと大岩にたどりつくと「兄さん、千代の手をしっかり握ってね」と、大岩の方へ手を差し出しました。千代は自分の力が抜けていくような気がしました。そして、深い眠りに落ちてゆきました。
 翌朝、大岩にもたれて、満足そうにほほえんでいる千代の死体が発見されました。千代の心は今も大岩のもとに、そして人々の心の中に生きています。


中津川市落合
【解説】
 銭亀と落合の境、坊主平に登る道の傘松の林の中に、1.5m4方ほどの岩があり、この岩に祈ると、痣やいぼが取れるという。今でも大岩のもとの祠には小石が沢山上げられ、いぼや痣のある人が、小石を受けてきて、いぼや痣をこすると取れるという。取れたら小石を返し、お参りしてくる。