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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

隠された千両箱〈中津川市落合〉

 幕末の頃の話です。千両の小判をつめた箱を埋めて来た老人がありました。この老人がぽっくり死んでしまい、親戚の人々や近所の人々が金を探すと、台所の縁の下から瓶に詰めたお金が出て来ました。葬式の費用を引くと少し余ったので親戚で分けました。
 この老人が死ぬ少し前、鍬を持って歩いているところを、夜中に小便に起きた近所の子どもが便所の窓から見ていました。こんな夜中に何だろう、と思いましたが、気にもとめず忘れてしまいました。
 時代は明治、大正、昭和と変わり、その時の子どもは、大人になり老人になってしまいました。そしてある時、昔死んだ老人を思い出しました。「あの時金を埋めたんでは?」
 この老人は、あの晩の老人の歩いた方向を思い出し、夜中に探してみました。そしてとうとう発見してしまいました。箱をこじ開けてみると、かなりの小判が入っていました。小判が出れば、近所の人も騒ぐだろうし、新聞にも出てしまう。そうなれば自分のものにもならないだろう。もう一度埋めてゆっくり考えようと、もと通りに埋めて家に帰りました。さあ、それからというものは、夜もゆっくり寝つかれません。
 そしてとうとう、ある人に相談することに決めました。そして長い時間かかって、一部始終を話してしまいました。相談を受けた人も、老人が考えた通りのことしか言いませんでした。
 私はこの二人の話を全部聞いてしまったのです。でも私は、その小判を黙って掘りにいこうとは思いません。


中津川市落合
【解説】
幕末=外国船がやって来て通商を求めたり、幕府に反対する武士たちや、幕府を守ろうとする武士たちとの争いが日増しに強くなってきたり、大勢の群衆が豪商や米屋を襲う打ちこわしが起こった。伊勢神宮のお札が天から降ってきたといって酒食を強要したり、「えいじゃないか」と叫んで大勢が踊り狂う事件もあった。