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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

雷石〈中津川市阿木〉

 あおの村は山には大木が茂り、空を隠すほどのありさまで、立派なものでありました。
 ところが困ったことに、夏になると雷様が空を飛び回って雨を降らし、畑を流し、山を崩して大暴れをするのです。
 「雷様をこらしめる、何か良い方法はないもんか」と皆で相談しましたが、良い考えは浮かんで来ません。
 その話を聞いた力持ちの剛力(登山の荷物を運ぶ人)は「雷様をおらがひっ捕らえてくれる」と待っていました。
 ある日、大粒の雨が降り、稲妻が駆け回って、雷様がやって来ました。剛力は腕を振り回し、暴れる雷様に飛び掛かると、後ろから羽交い絞めにしました。剛力が腕に力を入れて絞め上げると、雷様はひいひいと泣き声を上げました。
 「もう二度とこんないたずらはしません」。すると剛力は、「二度と暴れんという証拠になるものをおいていけ」といいました。
 しばらくして、雷様は「そうだ、おらの手の跡を証拠においていこう」そういうと、すぐ足元にある大きな石に、ぴたんと手を当てました。すると、なんと石にくっきりと雷様の手の跡がつきました。
 それからというもの、どれだけ雷が鳴っても、音がするだけで、あおの村には決して雷は落ちず、大雨も降らなくなりました。
 今では、阿木川ダムができ、雷石も水の底に沈んでしまいました。


【解説】
 小学校3年生の頃から、雷石を知っているという中津川市阿木の丸山宮藏さん(92)に話を聞いた。
 当時はよく雷が落ちていた。「地震、雷、火事、親父」という言葉があるように、雷は地震の次に怖かったと話す。あおの村には雷が落ちないのに対し、住んでいる阿木には雷が落ちるので、丸山さんは「けなるい(=羨ましい)」と思いながら、阿木にも落ちないことを願って、雷石を見たり、触ったり、登ったりしていた。「実際に見た大きな雷石の手の跡は、人の手の倍くらいの大きさで、右手の形をしていた」と話してくれた。