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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

踊る人形〈中津川市中津川川上〉

 川上には、元禄以来何百年と続いた恵那文楽があります。
 三味線にあわせて人形浄瑠璃が語られ、浄瑠璃に合わせて人形使いが人形をあやつるのが文楽です。
 恵那文楽は、元禄の頃から、一日の仕事が終わった後、練習仲間の家をかわりばんこにまわっては、土間にむしろをしき、松明をたいて、練習を重ねてきたのです。
 明治になって国は「芸人でない者は祭礼の時でも興行してはいけない」と芸人には鑑札を与えました。鑑札のない恵那文楽は上演できなくなりました。
 人形使いの一人、原さんが庭を見ていると、誰かが廊下をスー、スーとすり足で歩く音がしました。家には原さん以外には誰も居ないはずです。
 襖を開けてみると、やはり誰もいません。次の部屋を開けてみると長持があって蓋が開いていて、白い顔がいくつも原さんの方を見ています。これは、文楽の首で、文楽ができなくなったので、みんなで分けて保管しているのです。
 ある夜、原さんが寿座の前を通ると、中で人声がします。入って見ると、首の集会でした。「芝居がしたいねえ」「芝居がしたいよう」
 次の日、原さんはみんなに昨夜の話をしました。「おらの家の人形も夜中に踊っとるぞ」と、どこも同じでした。久しぶりに文楽を上演することになりました。
 その夜、寿座は、川上中の人が集まって「関取千両のぼり」がみごとに演じられました。
 こうしてこっそり続けられた文楽も、やがておかみの禁止もとかれ、お祭りなどに演じられています。
参考文献/『中津川のむかし話』


文楽の里「楽生館」(中津川市中津川川上 (かおれ)地区)に保存されている人形の首
【解説】
 川上に保存されている人形の首50体のうち、23体は民族資料として岐阜県の文化財に指定されている。首は大阪文楽座所蔵の人形に次いで、全国的にも傑作だと評価されている。長年保存しているうちに、首のあちこちが欠けたり、削れたりしているが、下手な修理はかえって人形の品位を汚すものとして、手は加えられていない。