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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

火あぶり仙堂さん〈中津川市根の上〉

 仙堂さんという馬方が中津川で日用雑貨や魚などを仕入れ、馬の背に乗せ峠にさしかかると、道ばたに腰を下ろしていた娘が、「足を痛めて困っています。馬の背に乗せて行ってもらえまいか。」と言います。「それはお困りじゃ。」と仙堂さんは親切に乗せてやりました。
 しばらく行くと急な坂になった。(娘さんは大丈夫かな。)と思って振り返って見ると、驚いたことに、娘の姿はおろか、仕入れてきた魚や油揚など、みんななくなっています。 「さては、娘は狐だったのか。」と悔しがりました。こんなことが2、3回あったので、今度こそはこらしめてやろうと思いました。
 幾日かたったある日、仙堂さんがいつものように中津川で品物を仕入れ、岩村で売ろうと峠にさしかかると、若い娘が馬に乗せてくれと言います。「今日は馬の機嫌が悪い。坂道で暴れるかも知れん。娘さんが落ちるといかんでのう。」
 用意して来た荒縄でぐるぐる巻きにして馬にしばりつけました。馬が歩くたびにしめつけられて苦しいので、とうとう狐の姿になってしまいました。
 家に帰ると仙堂さんは、狐を馬屋の柱に縛りつけ、「後で火あぶりにしてやる。」と言って酒を飲みだしました。疲れと酔いで仙堂さんが眠っている間に、気のやさしい女房は、狐の縄を解いて逃してやりました。
 それからは、仙堂さんが峠にさしかかると、「火あぶり仙堂さん今お帰りか。」と言っては、狐が出迎えるようになったということです。


【解説】
 昔は中津川から阿木、岩村へ行くのには、今の根の上高原の峠を越えて行ったものである。
 狐や狸が化けるのは10年以上生きた高齢のものだけだそうである。今、人類は60年、70年生きるのが普通になっているが、もし核兵器の爆発で、死の灰を被ったら10年も生きられなくなって、原始生活に戻るだろう。