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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

妻の神〈中津川市阿木〉

 今から450年ほど前のこと。世の中が乱れて、あちこちで戦乱が起こっていました。
 上州安中の豪族が戦乱のために家を焼かれ、家族が殺されて、娘一人だけが助かって、都へ修行している兄をたよりに旅に出ました。
 娘は阿木までやって来ましたが、慣れぬ旅にすっかり疲れ果て、道ばたに倒れるように休んでいました。そこへ通りかかった村人がかわいそうに思って、小屋に泊まるようにすすめました。娘はありがたがって、小屋に泊まって身を休めました。
 数日たって、娘が泊まっている小屋の戸をたたく者がありました。こんな夜更に誰だろうと思っていると、
 「お頼み申す。お頼み申す」と言います。 娘が少し戸を開けてみると、若い男が立っていて、「私は都から来たものだが、一晩泊めて貰いたい」と頼みました。
 娘は都から来たのなら、兄の事が聞けるかもしれないと思って、男を子やの中へ入れてやりました。
 翌日になって娘は「都からと聞きましたが」と言いかけると、男は「私は上州安中の者です。長い間都で修行していましたが戦乱があったと聞いて、急いで帰るところです」と語りました。娘は驚いて、「それではあなたは私のおにいさんでは」と、今までの事を話しました。2人は抱き合って再会を喜び合あいました。
 娘は兄に会って安心したせいか、病が重くなって死んでしまいました。その後を追うようにして、兄の方も死んでしまいました。
 村人たちは哀れな二人の兄妹を同じところに葬って、妻の神としてまつりました。


【解説】
 賽の神伝説では、2人が兄妹だと知らずに契りを結び、そのことを恥として自殺したということになっている。
 この物語では2人が病気でなくなったことになっている。作者は知っていて、このように美化して書いたものか。いづれにしても、2人が相次いで病死するのは、少し不自然である。