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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

へびにのまれた薬売り〈中津川市苗木〉

 あつい夏の昼下がり、富山の薬売りがやってきて、街道の傍らの清水を飲み、顔と手を洗うと、薬箱を枕にしてごろりとそこに横になって寝てしまいました。
 どのくらい時間がたったろうか、やがてそこへ一匹の大きな大蛇が現れました。大蛇は寝ている薬売りを見ると、腹がへっていたのか、いきなりぺろりと飲み込んでしまいました。
 目を覚ました薬売りは、あたりは真っ暗で何かなまぐさい臭いがしますし、べとべとした水がたまっています。手探りすると、まわりはぬるぬるした壁のようです。それでどうやら自分が大きなへびに飲まれてしまったのだとわかりました。
 「このままでは体がとけてしまう」薬売りはなんとか助かりたいものだと考えました。考えに考えた末に、いいことを思いつきました。
 薬売りは薬箱を手探りに探し当てると、箱の中からありったけの下剤を取り出し、それをあたり一面に撒き散らしました。そうすると、やがて大蛇はおなかが痛くなり、どたんばたんと苦しみもだえて、のたうちまわりました。そうしてとうとう、薬売りをぽーんと外へほうり出しました。薬売りはほうほうのていで逃げだし、大蛇は疲れはてて道に長く伸びて横たわっておりました。
 「帰りにまだおったら切ってしまうぞ」春木おろしに行く若者が通りかかってそういっていきましたが、帰りにもまだ大蛇が寝ていたので、とうとうよきで切り殺されて、木曽川に流されてしまいました。


【解説】
 殺された大蛇の崇りを恐れて、瀬戸から坂下へ抜ける瀬戸街道に、やさしい顔をした地蔵が安置されている。この地蔵は「岩清水の地蔵」とも、「横吹地蔵」「横引地蔵」とも呼ばれている。足下に清水が湧いていて、その水をいぼにつけると、いぼがとれると言われている。