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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

兄の井 弟の井〈中津川市落合〉

 落合村は谷が深く、水がないので、田んぼがたくさんありませんでした。それで川の上流から水を引いて田んぼを増やしたいと考えた兄弟がありました。
 いろいろ調べまわったすえに、2人は用水を2本作ることにしました。大工事になりますので2人だけではできません。秋のとり入れがすむと、2人は村の人たちに相談しました。しかし、用水を引くことは誰もが願っていることでしたが、村人たちは兄弟の計画を聞いて、とても出来ることではないと思って、誰も相手にしてくれませんでした。
 けれども兄弟は諦めきれず、仕方なく、2人だけで工事を始めました。2人は毎日夜明けから日暮れまで、雨の日も、風の日も、せっせと用水作りを続けました。兄と弟は別々に水路を掘っているので、なかなか工事は進まなかったが、それでも水路は着実にのびていきました。
 何年かたって、山肌で働く2人の姿が、村からもはっきり見えるようになりました。2人のことを「きちがい」などといっていた村の人たちも、この仕事ぶりを見ているうちに、「これは本当に水が引けるかもしれん」と思うようになって、1人、2人と工事を手伝う者が出てきました。
 兄の方は無理がたたって、完成を目の前にして病気で死んでしまいました。
 それからは、村の人たちも本気になって工事を手伝い、7年たって用水は完成しました。
 きらきら光って流れてくる水に、みんなは踊り上がって喜びました。田んぼ作りを、弟と村人たちが相談しているとき、突然村に役人がやってきて、弟をどかへ連れて行き、弟はそれなり帰って来ませんでした。


【解説】
 700年ぐらい前の鎌倉時代の話。釜沢の上流から水を引き、井巾まで掘り進んだところで、兄弟が大きなメンパに水を入れ、向かいの山の方に差し出して、水の水平を我が目で試しながら高低を測量したという思案坂という地名のところが今もある。