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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

弓の名人〈恵那市東野〉

 昔、仕事もせず、毎日弓の練習ばかりしている若者がいました。父親は怒って、「お前のような奴は家においておけん、どっかへ行ってしまえ」と叱りました。
 若者は家を出て当てもなく歩いて行って、ある村に入ると、村中の人々が泣いています。
 わけを尋ねると、「毎夜毎夜、化物が出て、村の者をいじめたり、物をよこせなどといって、大暴れするのです」といいました。「よおしわかった。俺に任せてくれ」と、若者は自分の胸をどんと叩いてみせました。「ありがとうございます。それなら…」と、村人は化物が出るところまでつれて行ってくれました。
 夜が更けて、あたりが静かになると、若者は木のかげに隠れて、化物が出てくるのを待っていました。しばらくすると、山の方で光るものが二つ見えました。二つの光は、やがて供え物に近づきました。若者は二つの光のあいだを目がけて矢を放ちました。
 「ぎゃあー」と化物は悲鳴をあげて逃げようとしました。若者は背中を目がけて又射ました。これも確かに命中です。
 翌朝、供え物のところへ行ってみると、血がいっぱいこぼれていました。血の痕をたどって行くと、山の洞穴まで続いていて、中に大きなネコの化物が寝ていました。若者が「どうして毎晩悪いことをするのか」と聞くと、「この村の人々は節分のお祭をしないからやったのです。でも、もう絶対にやりません」。
 若者は傷の手当てをしてやって村へ帰りました。村ではきちんと節分のお祭をすることにし、村中平穏に暮らしました。


【解説】
節分=立春の前日。二月三日ごろ。この夜、鬼打ちの豆をまいたり、ひいらぎの枝にイワシの頭をさしたものを戸口にはさんだりして、邪気を払う習慣がある。
節分祭=立春の前夜または当日に各地の寺社で行われる祭礼。(「大辞泉」より)