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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

キツネの玉〈恵那市中野方町〉

 昔々、中之方村に金兵衛さという貧乏なお百姓がおりました。ある日、道を歩いていると玉になった毛のかたまりが落ちていました。
 よほど、そのままにして帰ろうと思ったけれど、拾って家へ持って帰りました。
 次の日、金兵衛さが畑仕事をしていますと、見たことのない白髪頭の立派な老人がそばへ寄って来ました。
 「お前さんは、きのう狐の玉を拾ったな。今に大金持ちになれる。もし毛の玉をなくしたら又もとの貧乏に逆戻りじゃぞ。」
 老人はそう言うといなくなりました。
 それからどんどん金兵衛さんとこには金がたまり、田地や山もふえ屋敷も新築しました。
 村の人も、金兵衛さは、どうして、あんなに大金持ちになったのじゃろうと、うわさをしておりましたが、それでもたいへんな金持ちになったものですから、みんなが「金兵衛さま、金兵衛さま」と言って、うやまうようになりました。
 あるとき、金兵衛さは、毛の玉にほこりがついたものですから、大事なものだからきれいにしようと、ほこりを払っておりました。そうすると、手がすべって毛の玉は、ころころと転がって、池の中に落ちました。そうして、毛の玉は、池の水の出口から流れていって、それっきりどこかへ行ってしまいました。
 金兵衛さの家は、それから財産が減る一方、ふた月も経たんうちに、またもとの貧乏なお百姓になってしまったという話です。
 中之方には、いまでも、きつねの毛の玉を拾うと、福運が授かるという、言い伝えがあるといいます。


【解説】
 狐の物語の中で最高のものは歌舞伎にもなった、「玉藻の前」の話でしょう。陰陽師安倍清明との方術争いによって本性を表し宮中から逃れて行く金毛九尾の古狐の物語です。