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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

キツネ石〈恵那市三郷町〉

 男の人が車を引っぱって歩いていました。その前を女の人が大変疲れた様子で行きます。
 「どこまで行かっせる」と男の人が聞きました。「へえ、佐々良木まで行こうと思ってなも」と女の人が答えました。
 「わしも佐々良木まで行くところじゃで、この車に乗らっせれ」と、男の人が言いました。女の人はもじもじしています。「さあ、乗らっせ。遠慮なんかせんでもええで」と男の人がすすめます。
 「そんなら、乗せてもらおかなも」女の人はそう言って車に乗せてもらいました。
 道はいいし、春の太陽はのどかで、男の人は歌でも歌いたい気持ちでした。車はやがて佐々良木へ着きました。「さあ、佐々木良木へ着いたぜも」と、男の人が言うと、女の人は「もう、ちょっと乗せて行っておくれんさい。すまんなも」と言って頼みました。
 深瀬の用水まで来た時、「どうじゃえも、もうこのへんでええかえも」と言って車を止めたが返事がありません。おかしいな、と思って振り返ってみると、女の人の姿はなくなっていました。男の人は腰がぬけるほどびっくりして言葉も出ませんでした。
 それから、深瀬の用水のところに、今まで見たことのない、石がありました。
 男の人が乗せてきた女の人は、実はキツネで、そのキツネが石に化けたのかもしれないと言って、この話しが広がって、その石をおキツネ様と言う名でまつることになったといいます。


【解説】
 稲荷神社は、五穀をつかさどる倉稲魂神をまつる。倉稲魂神の異称が御食津神(みけつかみ)で、これが三狐神(みけつかみ)と結びついて、狐が神のつかいであると信じられ、狐の好きな油揚げを供えたりする。狐には、ある種の霊力があるのかもしれない。