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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

金兵衛さとタヌキ〈恵那市東野〉

 タヌキが穴へ入って行くところを見た金兵衛さは、穴の口元で生木を燃やして、煙を穴の中へ吹き込んだ。 タヌキは咳をして苦しがっていた。金兵衛さが家へ帰る途中で、「いくぞよ、いくぞよ」と、声がした。見ると岩の上にタヌキが立ってこっちを見ていた。
 「来たけりゃ来いよ」負けん気になって金兵衛さはそう言って、家へ帰っていった。
 その晩、金兵衛さが寝ておると、布団の上から押さえつけるものがあった。金兵衛さはそいつをはね返して飛び起きた。そして、その怪物に飛びかかって行った。大格闘になった。しかし、金兵衛さの方が力が強く、怪物は組みしかれてしまった。
だが怪物はちょっとしたすきを見て、金兵衛さから逃れ、山の方へ姿を消した。後になって見ると、家の中の方々にタヌキの毛がいっぱい落ちていたそうだ。
 いく日か経って、親類のおばさんがたずねて来たげな。
 「待てよ。あのおばさんは、せんだって死んだはずじゃ」と思ったが、まったく気がつかんふりをして話をしておった。
 やがて、おばさんに風呂をすすめると、おばさんは風呂へ入った。
 金兵衛さが風呂のようすをうかがっておると、おばさんは湯舟に入らず、外で湯をかぶっておるだけじゃった。
 風呂から出たおばさんを、金兵衛さは次の部屋から鉄砲でねらうとタヌキじゃった。弾をこめて、ズドンと撃つと、弾はおばさんの胸に当たり、おばさんは死んでしまった。
 十二時間経ってもおばさんのまま、十八時間経ってもそのままの姿。けれども、二十四時間経つと、急にタヌキに変わったそうじゃ。


【解説】
 金兵衛さは東野村の中の島の人。タヌキの穴は横引にあった。タヌキは「あざき」のタヌキという。タヌキは大入道や一つ目小僧や三つ目小僧などに化ける。キツネに比べてずる賢くなく、何となくほほえましい感じがする。キツネは美女に化ける話が多い。