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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

突眼薬師〈恵那市山岡町〉

 佐助夫婦は大層働き者でありました。
 その日、二人はいつものように連れそって裏山に、杉の木の枝打ちに出掛けました。
 ぼつぼつ休むとしようかなと、振り返った途端に佐助は松葉の先で、左眼を突いてしまいました。
 思わず「アッ」と叫んだ佐助の眼に激しい痛みが走り、立ちすくんでしまいました。
 昔から松葉の中にはめったにない事だが、眼に入ると失明してしまう程の毒があると言い、運悪く佐助はその毒に侵されたのです。あちこちの医者を訪れ、神仏に祈願しても少しも良くならず、佐助の左眼からは明りが失せて行きました。働き者だっただけにひどい気の落としようでした。
 そんなある夜、佐助の夢枕に仏様が立たれ、「川を下って一里程行くと、岩と岩の間に湧き出ている水がある。その水で丹念に眼を洗え」と、言われました。
 朝になるのを待ち、佐助夫婦は川をたどり下り、岩間に湯の花の匂う中から水の湧き出ているのを見つけました。その水を桶に汲んで持ち帰り、毎日御仏を念じながら眼を洗いました。
 幾日かが過ぎて、佐助の眼は薄紙をはぐように良くなりました。夫婦は人々に霊水の功徳を伝えました。人々はこれを聞いてこの霊水で眼を洗うと、見えるようになりました。
 皆は大そう喜び、きっと佐助の夢枕に立たれた仏様は「お薬師様」に違いないとその川のほとりに祀ることにしました。「突眼薬師」と呼ばれ、近隣の村々からも多くの人々のお詣りがあったと言います。


【解説】
枝打ち=下枝や枯れ枝を切り落とすこと。植林してある杉などで、節のない良質の材を得るために行う。えだおろし。
薬師如来=東方浄瑠璃世界の教主。一二の大願を立てて、人々の病患を救うとともに悟りに導くことを誓った仏。古来、医薬の仏として信仰される。(以下略)「大辞泉」より