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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

竜の戦い〈恵那市上矢作町〉

 江戸時代の初めごろ、山崩れが起こって上村川を堰止めた形になり、喉の滝など天然記念物ができました。上流はまるで海のように広く深いダムになりました。だからここの地名を「海」といいます。
 この満々と水をたたえた深淵に、いつのころからか、またどこから来たのか、二匹の竜が住み着きました。青竜は雄竜で黒竜は雌竜で、夫婦仲睦まじく暮らして居りました。
 ところが平谷川と海沢が、年々運び込む土砂が底にたまって、淵が浅くなって来ました。竜たちはこれでは暮らしてゆけないと、洪水を待っていました。
 やがて、雨がしきりに降り、大洪水になると、竜たちはそれに乗って、もっと川下へと下って行きました。
 二匹の竜がたどり着いたところは本郷地内、石洞川と上村川の合流するところです。ここは底がわからないほどの深い淵でした。その淵の真ん中あたりに、地底から盛り上がった岩石が小島のように一つありました。
 二匹の竜の夫婦は、この淵でなごやかに暮らしていました。そこへ間野の方から、飯田洞川を下って雌の白竜がやって来ました。平和な淵に黒竜白竜の激しい戦いが初り、二匹の竜は死力を尽して戦いました。そして結果は黒竜が白竜に噛み殺され、青竜は白竜を連れだって川下へと去って行きました。
 黒竜の霊魂はここに止まり、里人に害をなし、多くの者がこの淵に身を投げて自殺しました。そこで、黒流の霊を慰めようと、淵の真中の岩石の上に弁財天女(弁天様)を祀りました。すると自殺者はなくなりました。


弁天橋のたもとに祀られている弁天様
【解説】
 弁天様は七福神の一人。今では岸から社まで橋がかけられ、歩いて参拝できるようになった。弁天橋という。
 近年の集中豪雨で、川を堰止めていた岩石が流れ、喉の滝も甌穴もなくなり、「海」も海のようでなくなった。
 明治二年、海を通って長野県の平谷へ抜ける道が出来ると、海に六戸の民家が出来たが、今は一戸もない。