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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

夜泣き石〈恵那市明智町〉

 野添の集落に3年たっても、まだ子どものできない若い夫婦がありました。
 ある冬の晩のこと、その嫁さんが戸締まりをして寝ようと、表をのぞいてみると、どこかで人が「オーイ、オーイ」と呼んでいるような声がします。何かなと思って声のする方へ行ってみると、今度は「オギャー、オギャー」と赤ちゃんの泣き声のようです。
 もっと声のする方へ近づいてみると、大きな平たい岩がありました。確かにその岩から赤ん坊の泣き声がするのに、岩のまわりのどこを捜しても赤ん坊の姿はありません。そこで嫁さんは胸を開けて乳房を出し、「オーよしよし」と言いながら、まるで赤ちゃんに飲ませるように、声のする岩に乳房を当ててやりました。するとどうでしょう。不思議なことに、今まで聞こえていた泣き声がぴたりと止んで、あたりは静かになりました。
 その晩から嫁さんは毎晩毎晩、岩にお乳をやりに行きました。こうしていく晩もたったある日、嫁さんは赤ん坊をみごもりました。嫁さんはうれしくなって、岩にお礼を言いました。やがて生まれた赤ん坊は、病気一つしないで、すくすくと育っていきました。
 この話が評判になって、赤ちゃんの欲しい人や、お乳の出ない人が、次から次へと、岩にお乳を当てにやって来ました。
 岩はそれっきり、もう赤ん坊の泣き声を出さなくなりましたが、お乳を当ててくれた人には、必ず願いを聞き届けてくれましたので、後から後から、岩にお乳を当てて、お願いをする人が続いてやって来たと伝えられています。


夜泣き石
【解説】
 この岩には別の伝説があって、殺された山伏の恨みがこもり、不気味なうなり声を出すという話も伝えられている。もともとは古墳の天井岩で、冬の烈しい風が岩の隙間に当たって、虎落笛のように唸り声を出したのだとも言われる。橋にされたり、台座にされたりしていたのを、有志の方々の努力により、現在は大正村役場裏近くにある。