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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

打杭のさかしま櫻〈恵那市岩村町富田〉

 昔、夏の暑い夜のことです。子供達が集まって肝ダメシをやることになりました。怖い話を聞いた後で、一人一人村境の峠まで行って、自分の名前を書いた杭を打ち込んで来るのです。翌朝、杭が打ち込んであるかどうか確かめて臆病者かどうかを決めるのです。
 ところが、子供達の中にたいへん臆病な子がいました。他の子供達は一人一人出掛けて杭を打ち込んで帰ってきましたが、とうとう最後に自分の番がきてしまいました。
 「さあ行ってこい!明日、もしもお前の杭が打ち込んでなかったら、お前は男じゃないからな!」
 ガキ大将がそう言うと、皆がクスクスと笑いました。
 仕方なくブルブル震えながら、自分の名前の書いてある杭を持って出掛けて、暗い峠にやってきました。手探りで石を拾い、杭を立てて、急いでガツンガツンと打ち込み、さて一目散に帰ろうとしましたが進めません。どうしても前に進めません。誰かが着物のすそを引っ張っているのです。
 「お化けに捕まえられた!」
気の小さなその子はショックで死んでしまいました。
実はあわてていて、自分の着物のすそを、杭と一緒に打ち込んでしまったのでした。
 杭は桜の木で、根の方を上にして逆さまに打ち込んだのです。今は大きな桜の木になっています。
 村人達はこの木を「打杭のさかしま桜」と呼んでいます。「逆さま」のことを方言では「さかしま」と言うからです。
 ―いわむら昔ばなし余話より―


【解説】
 桜の木は今では巨木になっている。下田歌子の歌碑“松にのみ千代は許さじ山ざくら花もときはに咲くてふものを”が傍らかに立っている。松は千年の常磐木と言われているが山桜も常磐に咲くことがあるものだという意味。