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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

石室千体仏〈恵那市岩村町一色〉

 岩村の殿様和泉守に、美しい楓姫という姫がありました。その楓姫を松平左門という若者が好きになってしまいました。
 殿様の和泉守が江戸へ行って留守の、十五夜の晩のことでした。左門は姫に自分の心の中を打ち明けて「結婚してくれ」と頼みました。楓姫は驚きましたが、きっぱりとことわることもできません。
 「江戸にいる殿さまから許しを受けてきたならば……」と言ってしまいました。
 左門はその姫の言葉を信じて、その夜のうちに江戸へ向かって旅立ちました。その後、どうしたことか、左門は江戸にも着かず、家にも何の便りもなく、行方がわからなくなりました。
 ある夜、楓姫は夢を見ました。左門が大きな大蛇に飲み込まれながら「この腹を切り開いても、楓姫と結婚して、思いをとげてみせる」と、叫んでいるのです。これを聞いて姫は、自分の言った言葉を信じて旅に立って、行方知れずになってしまった左門のことがかわいそうで、自分のせいだと身をせめるあまり、とうとう病の床についてしまいました。
 ちょうどその頃、城下町の西の方の丘で、腹の裂けた白い蛇が見つかると、姫の心は暗くとざされ、病気はますます重くなりました。殿さまの和泉守は楓姫のことをたいへん心配しました。
 そこで、腹の裂けた白い蛇の見つかった丘の上に、金を塗った千体の仏さまを立てて、行方知れずになった左門の菩提を弔うとともに、楓姫の病気がなおるように祈ったということです。


【解説】
 一色の丘上に石室を設け、中に千体の仏像が安置してある。寛永九年(1633)松平乗寿の創設。享保二年(1717)松平乗賢再建された。
 7年目毎に御開帳となり、中日の4月30日には稚児行列が行われる。