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ひがしみの昔話

ひがしみの昔話

慈悲深い領主〈恵那市山岡町下手向〉

 あすは殿様の鷹狩りがあるという前の晩に、ある百姓屋のよめさんが不思議な夢を見ました。その夢というのは、死んだここの家のお父さんが現れて、「あしたは鷹狩りがあって、私も殺されることになる。私がここの家に逃げ込んだら助けてくれ。私は片目がつぶれているからよくわかる」と、言うのです。
 次の日、鷹狩りが始まると、1羽のキジが家の中へ逃げ込んで来ました。嫁さんが見てみると、そのキジの片目がつぶれていました。嫁さんは「このキジはおしゅうとさまの生まれ変わりにちがいない」と思って、お釜の中へ隠しました。
 やがて鷹狩りも終わり、勢子(鳥やけものを追い出す係り)に出ていた夫が帰ってきたので、嫁さんがキジの話をすると、夫はカラカラと笑って、お釜の蓋を開けて見ました。
 「なるほど、オヤジのように、こいつも片目だな。しかし、オヤジもわが子に喰われれば本望だろうて」と言って、そのキジを殺して食べてしまいました。
 あまりのむごい夫の仕打ちに、嫁さんは殿様のところへ、訴えて出ました。
 この話を聞いた領主の加藤二景廉は、夫のむごい仕打ちを憎み、嫁さんの暖かい心を誉めました。
 夫の百姓はこの土地から追放され、もう永久に戻ってこれなくされました。それに対して、嫁さんの方は、その温かい心根に感じて、一生幸せに暮らしていけるようにしてあげました。


【解説】
 この物語は、無住一円によって著された「沙石集」という本の中に出てくる。弘安6年(1283)に完成した仏教説話短編集である。
 加藤二景廉は、源頼朝の重臣。この東美濃一帯を領有した。岩村八幡神社に神として祭られている。この物語ゆかりの家として知られる勝久さん宅(山岡町下手向)には、お殿様の御位牌といわれるものや、刀の鍔などが今も保存されている。