赤壁城〈中津川市苗木〉

 

 苗木のお城は赤土で壁が塗ってあるばかりで、表面が白く塗ってありません。これはお金がないので塗ってないのではないかと思われるからと、あるとき白く塗ることに決められました。
村人が集められ、足場を組んで、見る間にお城は白く塗られていきました。木曽川を見下ろすような位置に、燦然と輝く白いお城の姿に、みんな思わず喜びの喚声を挙げました。
 するとその時、突然空が暗くなって、黒雲が低く垂れ込めました。ときどき突風が木の枝をゆすり、ちぎれた木の葉が小鳥のように空に舞います。「嵐がくるぞ」人々は自分の家へ帰ると、戸締まりをしっかりして嵐の過ぎるのを待ちました。嵐は一晩中ごうごうと吹き荒れ、人々は眠らずに朝を迎えました。
 朝になって、お城の方を眺めた人々は、アッ おどろと驚きました。これはどうしたことでしょうか。お城の白壁はすっかり削り取られ、お城はもとの赤壁に戻ってしまっているではありませんか。また人々が集められ、お城に白い壁が塗られました。今度は前よりもしっかりと塗られて、それはそれは美しい、白壁のお城になりました。すると、どこからともなく黒い雲が現れて、激しい雨が降り始め、雷がドオーン、ドオーンと鳴り響きました。木曽川から龍が現れてお城をいくえにも巻くと、龍はその鋭い爪で、ガリガリと白壁を削り取っているではありませんか。
 お城はもとの赤壁に戻り、龍も姿を消しました。お殿さまは龍の顔が、ご先祖さまに似ていたといわれました。それからというもの、もうお城を白壁にしようという話は一度もなく、ずっと苗木のお城は赤壁 のままにされてきました。

 
 

【解説】

 天照大神はイザナギ(天神)とイザナミ(地神)の間に生まれた。〔岩波・日本古典文学大系〕その胞(へその緒など)を埋めた所が恵那山となり、血を洗った所が「血洗いの池」で、かって土砂で埋まり、今は血洗神社が祀られている。屏風岩は道路工事で移動したが、岩の表面に古代文字(ペトログラフ)が刻まれている。アギは古代韓国語で赤ん坊、実りの意味。