消えた滝〈中津川市阿木〉
むかし、大禅寺というお寺に、峰翁祖一という徳の高い和尚さんがおられました。この和尚さんの説教の日には、話を聞きに来る村人たちで、お寺はいっぱいになりました。けれどもただ1つ残念なことは、このお寺のすぐ後ろに滝があることでした。この滝の激しい水音で、和尚さんの話し声が、後ろの方にいる人にはよく聞こえないのです。和尚さんも気にはしていましたが、だからといって、どうすることもできません。
そんなある日、1人の見知らぬ老人が村人にまじって祖一和尚の説教を聞いていました。説教が終わると和尚さんに言いました。
「今日はよいお話を聞きました。それにしても滝の音が邪魔になりますなあ」
そんなある日、1人の見知らぬ老人が村人にまじって祖一和尚の説教を聞いていました。説教が終わると和尚さんに言いました。
「今日はよいお話を聞きました。それにしても滝の音が邪魔になりますなあ」
「そうなのですよ。何とかならぬものかと毎日思案はしますが、こればかりはどうにもなりません」と、祖一和尚も困り顔。
「和尚さん。よいお話を聞かせてもらったお礼に、私が川の音を消してあげましょう」と、老人はこともなげに言いました。和尚さんはびっくりして老人の顔をまじまじと見つめていました。
しばらくすると、にわかに空が曇ってあたりが暗くなり、激しい雷が鳴りわたったかと思うと、老人の姿は龍に変わり、折からの稲妻に光りながら空へ昇って行きました。それから大雨が3日3晩降り続きました。
4日目の朝、和尚さんが起きてみると滝の音が聞こえません。流れてきた土や石で埋まって、滝は1キロ程下流へ移っていたのです。
集まってきた村人たちもこのようすを見て、きっと神様のお陰だろうと驚きあいました。
「和尚さん。よいお話を聞かせてもらったお礼に、私が川の音を消してあげましょう」と、老人はこともなげに言いました。和尚さんはびっくりして老人の顔をまじまじと見つめていました。
しばらくすると、にわかに空が曇ってあたりが暗くなり、激しい雷が鳴りわたったかと思うと、老人の姿は龍に変わり、折からの稲妻に光りながら空へ昇って行きました。それから大雨が3日3晩降り続きました。
4日目の朝、和尚さんが起きてみると滝の音が聞こえません。流れてきた土や石で埋まって、滝は1キロ程下流へ移っていたのです。
集まってきた村人たちもこのようすを見て、きっと神様のお陰だろうと驚きあいました。
【解説】
峰翁祖一=臨済宗の高僧。大応国師の高弟で、大徳寺を開いた宗峰禅師と同門。岩村の明覚山大円寺の開祖。建武年間(1334)より東濃の地にあり、延文2年(1357)遷化した。年84歳。(別説98歳)